高齢者の方に見られるお悩み

心療内科の分野で取り扱われている症状の中で特にみられるお悩みは、「うつ」と「認知症」です

うつ病については女性に多くみられ、罪業妄想(何も悪いことをしていないのに、自分は悪いことをしていると思い込む)・貧困妄想(お金にそれ程困っているわけではないのに、貧乏であると思い込む)・不治妄想(病気が治らないと思い込む)が目立ちます。また、自殺する人の割合が高いことが特徴です。うつ病の一症状である意欲低下・記憶力低下等がいわゆる呆け(仮性認知症)と間違われることがあるので注意が必要です。

治療は心疾患に注意しながら抗うつ薬を中心とした薬物療法に加え心理療法が中心となります。自殺念慮の強い時や昏迷状態の時は入院も必要となります。最近遷延性うつ病という、なかなか薬物療法に反応しない型が増えてきて問題となっています。

老期認知症について

80歳以上では2割を超えている認知症

老年期の認知症疾患は大別して、アルツハイマー型認知症と脳血管型認知症の二種類があります。認知症は仮性認知症、正拳圧脳水頭症以外はほとんど治らないのが現状で、家族(特に女性)に大きな負担を掛けることが多くなります。介護保険制度が発足し、自宅にヘルパーなどが出向くサービスの提供が始まってますが、長所・短所があるので利用する場合は内容をよく確認する必要があります。入院するのが良い場合もあるのですが、男の論理で入院が遅れ、嫁に大きな負担を与え、時に悲劇に発展することもあるので注意が必要です。今後は、認知症関連施設が充実する予定があり、入所待ちの時間が短縮され、より利用しやすくなると予想されます。

治療方法

高齢者では他に、老年期精神病(多くは妄想病)、せん妄(軽度ないし中等度の意識混濁に幻覚、妄想や夢体験が加わって恐怖や不安とまとまりを欠いて不穏な多動を表わす状態)、心気症(自分は病気だと思い込む状態)等が問題になります。高齢者は身体の予備能が低下しており、内科的原因で精神に変調を来たすことが多くみられます。まず、身体のチェックしながら精神の変調を検討する必要があります。高齢者の精神(言動)変調に気づいたら、早めに心療内科、神経科等の専門医に相談し、適切な治療を受けることをお薦めします。

うつ・痴呆の治療には、家族を中心とした周囲の人達の手厚い看護と病気に対する理解が欠かせません。患者の気持ちをよく理解しながら、介護にあたることが必要です。